女性記者30人が当事者として赤裸々に語る
本著に執筆したのは、新聞、テレビ、出版社、インターネットなどメディアで仕事をしているWiMNのメンバー約30人。これまで職場、取材先などで受けてきたセクシュアルハラスメント被害を打ち明けたり、家族や学校、仕事を通じて女性記者としての自分を見つめ直したり、あまり語られてこなかった、メディア界のジェンダーに係る問題や事象を当事者として赤裸々につづりました。
第一章「私たちのこと」
「聞く」では2人1組のメンバーが互いをインタビューし、「語る」では、11人が自分の経験や生き様を吐露しています。メンバーの体験談はそれぞれ視点が多様で、セクハラだけにとどまらず、障害者差別や見た目から来る差別などにも言及している人もいます。とはいえ、セクハラ、性暴力の被害については心に迫るものがあり、加害者だけでなく自分の対応を責めるようになったことや、二次被害(声を上げたことで、周囲の不適切な反応やバッシングでさらに傷付けられること)の辛さにこの問題の根深さが感じられます。
第二章「コラム―社会時評」
社会問題について、各メンバーが鋭い論評を展開する第二章では、「人権派」のフォトジャーナリストとして知られ、月刊誌「DAYS JAPAN」元編集長の広河隆一氏による元アルバイト・社員への性暴力、就職活動中の女子大学生が面接や企業のOB訪問で受ける「就活セクハラ」、医大入学試験で女性受験生の得点が減点されていた問題、かかとの高いパンプスやハイヒール着用強制に異議を唱える「#KuToo」運動、沖縄の米軍基地と性暴力の関係などを取り上げています。
第三章「メディア・アンケート」
メディアで働く女性が現在、どのような環境で働いているのかを知るために、新聞社(全国紙・地方紙)、通信社、テレビ局、ネートニュース社、出版社計86社に質問し、65社から回答を得たものをまとめました。質問は大きく分けて、セクハラの実態と各社の対応、そして女性の採用・登用の2つを聞いてます。この回答結果を明らかにすることで、各社の実情と姿勢を多少なりとも明らかにし、メディアで働くことを希望する学生さんら若い方々の参考になれば幸いです。
(「マスコミ・セクハラ白書」編集委員・森映子)
はじめに
第一章 私たちのこと
第一部 聞く
「ふざけんじゃねえ!」
「おっさんクラブ」ノリという魔物
会社を提訴するということ
ひとりになると頭をかけめぐる「あのこと」
咲くなら場所は自分で選ぼう
原点は「家庭科、なぜ女子だけ」
他ならぬ女性記者たちが麻痺してる
見た目だけで人を判断するのも性差別
悪いのは、私?
マイナスからのスタートだった
私と言う「女」に心から謝りたい
痛みの記憶
告発の理由
笑顔の奥による硬い石
第二部 語る
「本当のリスペクト」を得るために
「こんな記憶を持ったまま死ねない」
ドラえもんの記憶
今も胸に残るわだかまり
よみがえった「妊娠するなよ」の一言
マミートラックはいらない
同期入社した女性記者は全員やめた
「男女平等ネイティブ」が感じる気持ち悪さ
当たり前すぎた「警察からのセクハラ」
#MeTooへのもやもやから見えたミッション
これからペンを持とうとするあなたたちへ
第二章 コラム 社会時評
「人権派」広河隆一氏事件
就活セクハラ720人アンケート
セクシュアル・ハラスメント「禁止」の法制化
メディア業界のセクハラ問題
医学部入試の女性差別問題
#KuTooから考える
長崎市元幹部による加害事件
性暴力と軍隊
各地のレイプ裁判で相次ぐ「無罪判決」
第三章メディアアンケート
アンケート/回答
アンケート結果分析
終わりに