2020.02.16

女性記者30人が当事者として赤裸々に語った「マスコミ・セクハラ白書」

「マスコミ・セクハラ白書」が刊行されました。

本著に執筆したのは、新聞、テレビ、出版社、インターネットなどメディアで仕事をしているWiMNのメンバー約30人。これまで職場、取材先などで受けてきたセクシュアルハラスメント被害を打ち明けたり、家族や学校、仕事を通じて女性記者としての自分を見つめ直したり、あまり語られてこなかった、メディア界のジェンダーに係る問題や事象を当事者として赤裸々につづりました。

第一章「私たちのこと」の「聞く」では、2人1組のメンバーが互いをインタビューし、「語る」では、11人が自分の経験や生き様を吐露しています。

メンバーの体験談はそれぞれ視点が多様で、特にセクハラ、性暴力の被害については心に迫るものがあります。

Aさんは新人記者時代に県警本部の幹部と記者の飲み会で、女性の自分だけお酌や注文、灰皿交換をさせられ、コンパニオンのように扱われました。Bさんは警察担当記者だったとき、警察署の官舎で夜討ち朝駆け(特ダネをつかむために記者が取材先の自宅に通うこと)をしていた刑事課長からいきなり抱きつかれ、キスをされました。Bさんは当時、捜査情報を得る対象の加害者との力関係があったので、「自分が被害者である」という認識を持てず、「運が悪かったし、自己責任でもある」と思い込み、職場で被害について訴えることができませんでした。人権について記事を書きながらも、「自分の人権には思い至らなかった。あわれだ」と悔しさを打ち明けています。

Cさんは、取材相手の政党幹部から事あるごとに二人きりになろうとされ、「キスしたい」「エッチしてるの?」と平然と聞かれました。Dさんは、取材中の企業の社長から「君のおっぱいを触らせてくれないか」と何食わぬ顔で言われました。

さらに女性記者たちを追い詰めたのは、二次被害(声を上げたことで、周囲の不適切な反応やバッシングでさらに傷付けられること)でした。Eさんは、地方支局で警察担当だった新人時代に、夜回り先の警察幹部から抱きつかれ、車の中でレイプされそうになるなど、別々の警察官から2度もセクハラに遭いました。2度目に支局長に被害を報告したとき「おまえ、またか。こんなことが続くようなら、いなくなってほしいと思ってしまうよ。異動したいか」とあきれ顔で言われ、絶句してしまいました。この事をきっかけに、「相手をいなせなかった、浅はかな自分が悪い。こんなに自分を犠牲にしても、私は所詮、ダメなんだ」と自己肯定感が低くなってしまったといいます。それでも彼女は仕事を辞めず、「怒り」を胸に取材を続けています。

Fさんは男性上司から体を触れられ、「セクハラですよ!」と注意したところ、それ以来上司の態度は豹変。経費や出張など業務申請はすぐに通されなくなり、執筆した原稿は「いらんわ」「偏っている」などと言われて採用されなくなり、心療内科に通うまで心身共にダメージを受けました。

第二章の「コラム―社会時評」では、「人権派」のフォトジャーナリストとして知られ、月刊誌「DAYS JAPAN」元編集長の広河隆一氏による元アルバイト・社員への性暴力、就職活動中の女子大学生が面接や企業のOB訪問で受ける「就活セクハラ」、医大入学試験で女性受験生の得点が減点されていた問題、かかとの高いパンプスやハイヒール着用強制に異議を唱える「#KuToo」運動、沖縄の米軍基地と性暴力の関係などの社会問題、関心事について、各メンバーが鋭い論評をしています。

第三章の「メディア・アンケート」は、メディアで働く女性が現在、どのような環境で働いているのかを知るために、新聞社(全国紙・地方紙)、通信社、テレビ局、ネートニュース社、出版社計86社に質問し、65社から回答を得たもの。質問は大きく分けて、セクハラの実態と各社の対応、そして女性の採用・登用の2つを聞いてます。この回答結果を明らかにすることで、各社の実情と姿勢を多少なりとも明らかにし、メディアで働くことを希望する学生さんら若い方々の参考になれば幸いです。

(「マスコミ・セクハラ白書」編集委員・森映子)

本書については「BOOK」のページに目次をアップしています。